2004年06月30日

《皇帝》はうなずかない 運命のタロット10

皆川ゆか、95年6月刊。

《戦車》VS《太陽》のフェーデは《戦車》方の勝利に終わり、《愚者》のカードの封印が解けます。
そのとき、居合わせたライコたちは《愚者》を封印した際の《女帝》の叫びを体験します。以下本文p166より。
―消えてしまえ、《愚者》め!
《女帝》は叫んでいた。
――おまえは、あたしの大切なあの人を奪ったんだ!
(大切な人?)
誰だろうか。
《太陽》たちは、《愚者》がプロメテウスの仲間を殺すっていってた。もしかしたら、《愚者》は過去にも、プロメテウスのメンバーの誰かを殺してたんだろうか。
悲痛な声で彼女はいい放った。
――あたしのこの世でいちばん愛した人!
(あぁ)とあたしはうめきをもらす。実際に耳にしていたとしても、ここまで彼女の心情は伝わってこなかったろう。感情が波動として認識を揺さぶってるからこそ、あたしは彼女の心を感じることができた。
《女帝》は彼を本当に、愛していた……。
絶望と、怒りと、哀しみこそが彼女の波動のすべてだった。
《月》とのフェーデにライコたちは勝利したものの、改変≠ナ殺害の対象になった河内美代子は正気を失っていて、舞台でジュリエットを演じられる状態ではなく。
仕方なく、ライコは《魔法使い》の力を借りて変身術で河内さんになって舞台に立ちます。ライコは中学の演劇部で舞台監督をやっていて、その時「ロミオとジュリエット」をやっていたために大まかな台詞を覚えていたのです。
ところが、その舞台でロミオとして立っていたのはプロメテウスの《皇帝》。ライコ(変身中なんでwith《魔法使い》)は彼に……。ってなオマケつき。
その後、変身が解ける前に校内の人目につかない場所に行き着き、どうにか人には見られずに変身を解いたライコたちの前に、《皇帝》が現れ……。
《皇帝》と《魔法使い》の会話って見ててとっても面白くて大好きだ(笑)
そして更にその場に現れたのが《女帝》。

「《女帝》……」と、《皇帝》が協力者の名前をつむぐ。
 声音には戸惑いのニュアンスが感じられた。この場に彼女が来るってこと、予想してなかったんだろうか。
「うん」と、呼びかけに女帝はうなずいた。
 その仕草は、いつものちょっと大人びた彼女のイメージにそぐわない。子供っぽさみたいなものを覚えさせた。
「そうか」
《皇帝》は切れ長の目をわずかに細める。声音から戸惑いの色は消えてた。《女帝》の様子に、なにか合点のいくところがあったらしい。
「そうだったな」と納得の顔つきでもらした。「ここに現れる《女帝》はそうだったのだな」
「うん」と、《女帝》は小さく繰り返す。

(略)

「そうか」と《皇帝》は繰り返した。《女帝》の姿をしげしげと見やる。「《女帝》がそうだということは、《皇帝》は……」
「改変≠キるよ」
《女帝》は大きくかぶりを振った。
「たとえ、どんな結果になろうと、改変≠オてみせるよ」
「そうだな」《皇帝》は目を伏せる。
《女帝》は《皇帝》をじっと見つめてた。この場へ現れたのも、べつにあたしたちにどうこうってわけじゃないみたい。さっきの発言以来、こっちには一瞥さえも与えようとしなかった。《皇帝》に会うことが目的だったかのようだ。
《女帝》は《皇帝》よりも背が低かった。横に立つ協力者を仰ぎ見る形になってる。
「あんたに会いたかったよ」
彼女はいった。その言葉をつむぐ彼女の顔は、なにかをこらえているようにも感じられる。しいて自分を気丈に見せようとしているみたいにも思える。
「本当に」と彼女はいい、「本当に、会いたかったよ」
と、繰り返した。
「《女帝》は莫迦だなァ」《皇帝》は微笑む。「会いたければ、いつでも《皇帝》のもとへ来ればよい」
「そういうわけにはいかないよ!」
《女帝》の声が乱れた。押さえつけてた感情が表にもれ出してる。
今にも泣き出しそうな顔に見えた。
 こつん――《皇帝》が《女帝》の額を小突く。いきなり人差し指をあてられ、《女帝》はよける間もない。わずかに頭を後方へそらされてしまう。
そのさまにあたしはギョッとなった。
(なぜ、こうも奴は《魔法使い》に似てるんだ)
容姿や声だけならともかく、いや、百歩ゆずって、こういう姿してると性格まで似てるっていうにしても、これは異常だ。
(どうしてこいつは、《魔法使い》とまったく同じ仕草するんだ!)
 あたしはかたわらに立つ《魔法使い》を見上げた。《魔法使い》は、あたしの視線に気づかぬ様子で、二人の姿を双眸にとらえてる。
「あのねぇ!」
頭を戻しざま、《女帝》は《皇帝》へ喰ってかかった。彼女の顔にあった涙の兆しは拭い去られてる。《皇帝》はニヤリとほおをほころばせた。
「その顔のほうが、《皇帝》は好きだぞ」
ほめ言葉に《女帝》はかすかにほおを染める。まるでごまかすみたいに、そっぽを向いた。
「《女帝》は強く美しい」と、《皇帝》はいう。
「あんたは意地悪だよ」と、《女帝》はよそを見ながらいい返した。
以上、p273〜276でした。
シリーズ中でも5本の指には入るだろう、という大好きなシーンです。
いや、好きというか……その後に起こることを思うとじーんとくる、と言った方が正確かもしれませんが。
とにかく、《女帝》と《皇帝》のコンビは最高♪
コンビで出てくるのはこれが初めてですしね。

この後、《女帝》はライコに自分とのフェーデの予告をし、《皇帝》と共に立ち去る、ってところで話は次へ。
posted by ルゥ at 12:30 | Comment(1) | TrackBack(0) | ライトノベル | 記事編集
この記事へのコメント
最近、中古で入手して13年ぶりの再読。
タイトルでググったらAmazonの次にこのページがヒットした事実に慄くw

それにしても、やっぱりp273-276は泣ける。゚(゚´Д`゚)゚。
13年前には予想もしなかった、35歳2児(ワケあり)の子持ちの現在。。。
Posted by ルゥ at 2017年06月15日 17:48
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