2004年10月09日

魅魎暗躍譚 碧眼の少年(前編・後編)

前田珠子、2004年9月刊。

イラストが田村由美。
コバルトのHPでそれを知った時、あれ田村由美がイラストってどこかで……?
と思ってたら、スーパーファンタジー文庫(今は廃刊?)で同シリーズを出してたと判明。
何年分かのコバルト文庫関連の目録を持ってる私でした。
(高校の頃から今のバイト先の本屋の「ご自由にお持ち下さい」コーナーにあるのを見かけては集めてた)
地元の図書館にも幾らかはスーパーファンタジーが置いてあるけど、
コバルトやホワイトハートと違って網羅されてるわけじゃないんで、
読んだことは今までなかった。
しっかし、このシリーズ、平成3年に始まったのにまだ完結しないらしい。
しかも出てるのがたった8冊という。それが今再びコバルトで復刊開始の模様。
たまたまブックオフでスーパーファンタジー版を見つけたんで手にとってみたら、
中のイラストに関しては全く同じのようです。
表紙はがらりと変わったし、文は作者が加筆修正を施したそうですが。
作者曰く、「今度こそコバルトで完結させる」らしいですが、どうなるのやら。


……という長い前置きは置いといて。
またなかなか独特な世界観を持ったシリーズらしいです。
登場人物の名前が「甲斐」「冬北斗志摩」「夕月夜隠岐」「夕月夜美濃」「しなの」等々、旧国名が入ってる人が多い。
更に名前も身分によって「平量仮名」「神聖真名」なんて2パターンあるらしいし。
魑魅魍魎を分解して再合成したのか、魅魎(みりょう)、魑魍(ちもう)、なんて魔物が登場します。
今回はメンバーが揃ったて感じなんで、これからどう動いてくのかが楽しみ。

話は本題から逸れるけど、田村由美というと「BASARA」が私には一番強い。
高校の部室で読んだなー。今はコミック文庫化されてる。
この本を読みながら、BASARAを読んでた頃がしきりに思い出されました。
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2004年10月05日

伯爵と妖精 あまい罠には気をつけて

谷瑞恵、集英社コバルト文庫、2004年9月刊。

シリーズ2冊目。
タイトルの「あまい」はどうして漢字じゃないんだか気になるのは私だけ?

今回は霧男(フォグマン)が絡んだお話。時代は19世紀末のロンドン。
前作で伯爵(エドガー)に雇われたフェアリードクター(リディア)。
エドガーの口説きっぷりが楽しいです。
作者もあとがきでなんかもう、『口説き魔と妖精』かもしれませんが、どうぞよろしく。とまで言っちゃってますし。

今回ウケたシーンその1。
リディアが焼いたビスケットをエドガーに出した時のシーン(リディアの父親も一緒)。
「それは興味深い。ぜひいただきますよ。」
興味深いって、未知の食べ物じゃないわよ。
リディアはかすかに眉根を寄せた。(略)
「なるほど、不思議な味がするね」
ビスケットを口にして、エドガーは言う。
「お口に合わないならそう言っていいのよ」
「知ってしまうとクセになりそうなのはきみみたいだ」
カールトンがわざとらしく咳払いをした。(p56)
カールトンというのは学者でリディアの父親。

ネコの姿をとってる妖精のニコとエドガーの漫才(?)もなかなかに楽しい一冊。


2009年3月28日、4年半ぶりに再読。
ほとんど内容を覚えてなかったなー。
缶詰の中に、何が囚われていたのか、とか。
この巻はアニメには全くタッチしていない部分で、これはこれで面白いですね。
タグ:谷瑞恵
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2004年09月27日

ハイスクール・オーラバスター オメガの空葬

若木未生(みお)、2004年8月刊。
地元の図書館で借りました。

最後に「オーラバ」シリーズが出たのが一昨年の10月だったらしい。
あぁそんなに時間が過ぎてたのか、と驚く。
思えば中1の時の学校図書館での出会いからもうすぐ10年が経つ。
この人の作品で最初に出会ったのが「天冥の剣1」。
シリーズの最初かと思ったら実は途中で、前に戻って読み直し、それから今に至る。
他レーベルまでの全チェックはしてないけど、コバルトから出してるのはみんな読んでる。
読んでるけど、手元に持ってるのは今のところ「XAZSA(ザザ)」シリーズの3冊だけ。

オーラバを振り返ってみると、初期〜「天冥」くらいが一番良かったように思う。
絵(イラストレーター)が変わってしまった前後くらいからどうもなぁ、と思うようになったような。

それでも、久々(別シリーズは去年の1月)に読んだこの人の文章は独特で好きだと感じた。
十九郎はどうなる!?彼の喋り方はまた回りくどい。
よくこんなの考え付けるなぁと思うくらい。
振り回されてるのは希沙良か十九郎かどっちなんだ。

あとがきによると、次で第二部が終わり、第三部に行くんだとか。長っ。
そして、知らなかったけど作者は抑鬱病になってたらしい。
それでこんなに間が空いた、という話をしてた。
何が原因だったのかまでは知らないけど、心は案外脆いのはわかる。
私は弱っちいくせに図太いんだと思う。
そんな自分が、時々無性に嫌だ。
でも、私が本当の意味で壊れても誰の利にもならないんだろうな、というギリギリの論理でどうにかつなぎ止めてる、のかもしれない。
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2004年08月30日

ブローデル国物語 夜の果てへの旅

シャロンの弟、テオの初恋物語。
とは言っても本人、これが初恋だと気付いてないらしいですが。
なんか10歳には見えないくらい、ちゃっかりしてるというか、
したたかというか、とにかくすごい。

「精霊の歌う夜」で初登場だったジャンがこんなところで登場。
しかもフルネームが「ジャン・ジュール・ジョレス」だと判明(笑)

意外なところでシャロンとラウールは出会ってた。
初対面(お互いそれとは知らなかったけど)からいい感じ♪

ぜひぜひ、テオとフェリシアとの再会シーンが読んでみたいです☆
タグ:橘香いくの
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2004年08月20日

鏡のお城のミミ やさしい花嫁のすすめ

倉世春、集英社コバルト文庫、2004年7月刊、8/11に読みました。

表紙がミミの花嫁姿で素敵☆
カルネー公爵嫡子、ジャン=バティストが投獄されたとの報せを受けて、
ミミは元王子のエリックと共にカンタン王国に戻ることに。

その口実として、「ミミとの結婚報告」をでっち上げ。
前回ミミに手痛くフラれたエリックとしては複雑な気分だろうなぁ。

そしてエリックの義理父(母王妃の再婚相手)、
ギヨーム王が今回出張ってた。

ミミの異父弟で今はカンタン王国の王太子である
フィディルの父親でもある。

ミミの母、セシルは宿屋の娘で既に亡くなってる。
ミミの父親は行方知れず、という状況。

っていうかギヨームは可哀想な人でもあるのは否定できないけど、
何この人、って感じ。
義理とはいえ息子の恋人(とも言えないけど)に手を出すなー!!

そして、バティストとエリックの間で揺れるミミ。
まぁどっちに転ぶかは読者には目に見えてるけど、
それにしてもミミってば鈍感。

2人で一緒のベッドで眠らなければならなくなった時、
ミミがとった行動はかなりお約束(笑)
うーむ、エリックには同情(^_^;)

エリックは今回頑張ってるなぁという感じ。一途〜。
初めて王の言葉に逆らってミミを城から連れ出し、
カルネー領へとミミと共に身を寄せたエリック。

さて、次回カルネー公にエリックはどう利用されてしまうんだろ。
ミミとフィディルのために己が身を投げ出したからには、
文句は言えないのかなぁ。
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2004年08月09日

なかないでストレイシープ めぐる聖夜と愛の家

竹岡葉月、集英社コバルト文庫、2004年7月刊、8/9に読みました。

シリーズ3冊目にして、どうやら最終巻の模様です。

あらすじとしては、アメリカの下町で母親と2人で暮らしていた
セリアは母を亡くして天涯孤独の身になる。

しかし実は亡き父はイギリスの貴族の家から駆け落ちしてきたと
いうことが判明し、臨終が近い祖父の元に引き取られ、
祖父の死後はテルフォード家の女主人として奮闘することになる、
って感じです。

そして、この時アメリカまで迎えに来てくれた執事の
ロドニー・ファインタックに淡い恋心を抱くようになり……。

今回は1巻以来のレギュラーのリー・アディソンが
なかなか損な役回りというか。
でも言動が面白かったなぁ。セリアが自分の気持ちに気付かないために、
「ああ神よ、どうぞこの鈍感女に天罰を与えたまえ」なんて(笑)

そしてひょんなことで、メイド姿になったセリアもなかなか(笑)
えー、寝起きにいきなりそんなものを見せられたロドニー氏には
心からご愁傷様、の言葉を進呈(笑)

でも、今回のセリアの心情にはぐっと来た私。
ずっとこの人が好きだと思ってた。
五年前のあの頃から、その想いは変わらない。
忠実な騎士か保護者のように接してくるロドニーを見るたび、
うれしさと歯がゆさを感じてきた。

いつかこの人と同じ目線に立ちたい。
一人の女性として認めてもらいたい。
もっともっと側に行きたいと、日を追うごとに焦がれていく。

嫌われたくなくて、認めてもらいたくて。
側にいてほしくてたまらなくて。

そのためにセリアは、彼の望む女主人になろうと、
今までがんばってきたくらいなのに。
(本文92ページより)
どこの部分が、とは敢えて言わないけれど、
今の自分の気持ちにぴったり重なるところにはっとさせられた。
まさに今の私が言いたいことで。

さて、セリアは一応の大団円を見たけれど、
私はどうなるんだろうなぁ、この先。
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2004年07月26日

楽園の魔女たち〜楽園の食卓(後編)〜

樹川さとみ、集英社コバルト文庫、2004年7月刊、7/26に読みました。

……とうとう終わっちゃったよ。
というのが読後の感想。

帝国皇女ダナティアの求婚相手の将軍は実はアレだったとか、
ごくちゃんの正体はとか、ナハトール喀血?とか、
ファリスとフレイの行く末は(殿下が)とかいろいろあったけれども。

お師匠様こと、エイザードの名前の意味……とてもいいなと思いました。

長かったシリーズ(開始は96年1月!)もこれで一応の収束(全21巻!)。
満足したような寂しいような、ちょっと複雑な気分です。
番外編は出たりするのかなぁ……?
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2004年07月21日

《隠者》は影に 真・運命のタロット7

皆川ゆか、ティーンズハート、99年2月刊。
高校の時にリアルタイムで読んでから、2004年の夏に購入。

カインと大河が一緒に飛行機にぃ〜。
いや仕組まれてるんだよねそれ。
っていうかカインってライコを……なのに。
知らない大河が可哀想なことこの上ない。

一時的に手を組むことになった2人。
そう、とカインは不自然なほどに気のない声を返した。
「彼女はライコと呼ばれていたのか……あなたも、そう呼んでいたの?」
「いや」
 大河は指先に放電の光を現し、煙草へ火を点した。
深々と吸い込み、ゆったりと紫煙を吐く。
「俺は、そういうふうには呼ばなかったな」
 カインは車外へ顔を転じる。
「ライコ……か」口の片端をほんのわずかに上げていた。
「あなたも、そんなふうに呼んでみたかったんじゃない?」
 大河は助手席を横目で見やる。
カインの表情を窺うことは、彼の位置からはできなかった。
「おまえ、さ……」
 嫌なやつだな、と大河はいった。
冗談とも本気ともつかない声音だった。

このシーン、後で大河の今後がわかった時に胸を打つシーンです。
カインがやなやつなのは自明なんで置いとこ。

《悪魔》と《戦車》のデート(?)は面白い〜。(笑)
っていうか、《悪魔》のビキニ姿はともかく、
《戦車》のアロハ姿がウケる!

大河たちはアルバトイ博士に会い、彼の理論によると、
(タロットの精霊のことは博士は知らないけれど)
「宇宙は百億分の一秒以内に消滅する」ということを聞く。
それが「世界の命運に関わる重要な事象」のことらしいと察する大河たち。

この後、《星》もからんできてややこしいことになるんだけど。

最後の最後で《魔法使い》と(記憶を失ったままではあるけど)
ライコが再会!
奔流の中央に大河は青いマントと金の髪を見ることができた。
『運命のタロット』のカードにおいて番号の『T』を冠する精霊
――《魔法使い》の姿がそこにあった。
彼の腕の中には白いツナギをまとった少女がいて、
《魔法使い》の顔を見上げている。
彼女の身体は《魔法使い》の展開した障壁によって守られ、傷ひとつない。そればかりか、濡れてさえいなかった。
「水元さん!」
 大河は彼女の名を叫んでいた。
 だが、彼女は大河のほうを振り向こうとはしない。
革のケースを胸に抱き、青いマントの精霊を見つめている。
 面には色濃く、戸惑いが浮いていた。
《魔法使い》……。
 唇は彼の名を紡ぎはした。
しかし、彼女はその名前を発した自分にいっそうの戸惑いを
覚えているようだった。
《魔法使い》はなにもいわず、宝石のような瞳をもって
彼女の姿を捉えている。
 障壁を展開した《魔法使い》の外側では、
ぶつかり合う波の生み出す飛沫と水煙が、高く上がっていた。
煙る水滴はダイヤモンドヘッドからの陽光に反射し、
きらめきながら散っていく。
 頭上には虹が現れていた。
 荒れ狂う海と隔絶されたかのように、穏やかで美しい光の軌跡であった。

というところで巻を閉じ、以後、5年間の間読者を待たせた後に
第2部は完結を迎えます……。

このシリーズ、「青」がキーワードですね。私の持論。
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2004年07月19日

《世界》。 真・運命のタロット9下

皆川ゆか、講談社X文庫ティーンズハート、2004年7月刊、
19〜20日に読みました。

読んだ経緯は上巻と同じ。

かなり初期の頃、《魔法使い》が黒板に書いたラテン語……
「Alea jacta est」……賽は投げられた。
このネタに関してのネタバレというか新たな伏線?が語られてます。
そっか、なるほど。

《悪魔》と《戦車》の会話ってなかなか面白い。
p70で「プロメテウスにいれば一緒に戦えるのに」という
《悪魔》の台詞で想定されてたのは一体誰?
《女帝》?《神の家》?

そして田村桂子とライコとの再会。
田村の考えてることは、私にはわからない。
それでも、彼女はやっぱりライコに魅かれてる、のかなぁ?

田村との戦いで心身共に消耗し、雨の中をふらつくライコを
迎えに来た大河。

この時の「俺が絶対に守ってやる」発言が、後々まで……なのか?
本人がこの時の記憶を失った後も。

《女教皇》の巻で《女教皇》がライコと合一≠ナきたのは、
《戦車》と《悪魔》の協力のおかげだったことが判明。
でも、象徴の力を発動させる際のシーン……確信犯だとわかりつつ、
うーん(笑)

《女教皇》と《審判》、《力》と《審判》の会話、
難しくもあり、面白くもあり。
《世界》の主体はおそらく……○○○の○、なのか?
《力》はある意味でサロメだったらしい。可哀想な女性。

そして、《皇帝》を失った直後の《女帝》と大河との邂逅。
遂に大河は《女帝》が人間の時に誰だったのか悟り、
懐かしい時間へと飛ばされます。

田村桂子が彼に言った「喪うために得続ける人生」、
彼がこの後どうなるか、を思うと、確かに喪うことにはなるけれど、
ちゃんと得続けるものもあるんだなぁと納得。
大河は笑った。
与えることで得られるものもあるってことだよ。
彼らの頭上にあるのは、抜けるような青い空と輝く太陽だった。
強い意志さながらの輝きを、空は無限の広がりを以て包み込んでいた。
……以上がこのシリーズのラスト。
最終章のタイトル「夏への扉」と併せて見ると、泣けてくるシーン。
今後の彼の運命を思うと感動というか切ないというか。感無量。

確かに大河はこの後永遠に、「あの女性(ひと)への誓いだけ」を
胸に抱いて生き抜いたんだなぁ、と。

この終わり方は感動的なんだけど、
やっぱり描かれなかった部分が気になって仕方がない。
第三部、何年か後に出て欲しいよー。

「たのみこむ」で一票を投じた私でした。
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2004年07月18日

《世界》。 真・運命のタロット9上

皆川ゆか、講談社X文庫ティーンズハート、2004年7月刊。

7/3の卒論中間発表後にタワーズの三省堂で一旦読破。
その後本やタウンで15%オフで購入もしたけど図書館で借りたのを
18〜19日で読了。

片桐先輩受難ですねー。
今後彼がどう変わってくのは気になるところ。

そして何とカインが……!
ちょっと《悪魔》のとった行動には驚かされました。
まぁでもカインもあんな奴だしな。
同情の余地がなくもないけど、スッキリした気はする。

そして前巻の最後で趙(チャオ)だと思われた人物は実は安西さんだった。
この人も一体いつどこでどうなったのか謎。

譲と再会した譲太郎。すれ違ってく2人が切ない。
この2人、本当は○○○○なのに。

ライコの妊娠が発覚し、対応に関して意見が分かれたところで、
下巻に続く――。
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2004年07月17日

《星》はなんでも知っている 真・運命のタロット6

皆川ゆか、ティーンズハート、98年9月刊。

これも今は手元に持ってます。
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2004年07月16日

《悪魔》でも恋に生きる 真・運命のタロット5

皆川ゆか、講談社X文庫ティーンズハート、98年4月刊。
高校の時にリアルタイムで読み、現在は購入済み。

マダムの息子のゴーリキー中佐を殺すきっかけを作ってしまった
《女教皇》は自責の念に駆られ、マダムに謝りに行こうとしたが、
彼女は《節制》に操られていた!

ってことで登場した《節制》たちとの戦闘に突入。
《恋人たち》も加わり、遅れてようやく《魔法使い》とも合流!
再びの四大≠ナ登場した分裂したグノーメ……可愛い〜♪

更に《審判》、《力》が現れ、《恋人たち》VS《節制》のフェーデは
《恋人たち》の勝利に。

けれど、「誰が何人死のうと構わない」という《魔法使い》に
《女教皇》は反発。

《魔法使い》が自分の協力者だからそばにいる、
と思ったことにショックを受け。
あたしは、協力者としてじゃなく、あたしとして必要とされたんだ。
(要求だ、これは!)
 でも、止まらない。
「あんたなんかと、いっしょに戦いたくないよ!」
 あたしはいい放った。
 ずきん、と胸が痛む。締め付けられるような感覚がある。
精霊の禁忌を破った反動が、降りかかってきてた。心の痛みがそのまま、身体に影響を与えてる。比喩としてじゃなく、実際に胸が張り裂けてしまいそうな感覚があたしを襲ってた。
(そうか)と、あたしははっきり認識させられた。
 彼と一緒に戦いたいんだ。それも、たんに田村たちとのフェーデに勝つためじゃない。記憶を取り戻すためでもない。
 あたしは今、ウソをついてる。(p157)

(略)

「《女教皇》は記憶とともに、心までも落としてきたか」
 声音にはかすかな苛立ちが感じられた。
「ど、どういうことよ」
瞳と声音に気圧されながら、あたしは問いかける。
「こういうことだ」
 いうなり《魔法使い》はあたしを抱きすくめていた。とっさのことにどう反応していいものか、わからない。声をもらすことはおろか、驚くことさえも、彼の腕にある力強さを感じてからのことだった。
「《魔法使い》が一度に抱きしめられるのはひとりだけなのだ」
 彼の背はあたしよりも高かった。
 彼の胸に抱き寄せられると、あたしの身体は引き上げられ、かろうじてつま先だけで立つような形になってしまう。彼は涙に濡れたあたしの顔を覗きこみながら、
「だが」
とささやくようにいった。「《女教皇》がもし、三十億の人間たちを、その小さな背中に背負っていたとしても、《魔法使い》は《女教皇》を抱きしめることをためらいはしない。《女教皇》が、その小さな背中に罪の刻印を背負っていたとしても、《魔法使い》は《女教皇》を抱きしめることをためらはしない」
 だから、と彼はつぶやく。
 だから、とあたしはきき返す。
 その唇を彼が塞いだ。
 あ、と声をもらしかける。でも、あたしの唇は言葉をつむぎだすことできない。彼の温かな感触を覚えるだけだった。
 目の前にある瞳は凝っとあたしを見つめていた。
 宝石の輝きはいっそう、強さを増してる。あたしは目を閉じることもできず、魅入られたみたいに双眸を見つめ続けた。(p162〜163)


いやー、もうラッヴラヴ♪大好きなシーンの1つっす。
どんな《女教皇》でも受け止める、って台詞にはシビレるなぁ〜。

ただ、この後。
いよいよ《死神》とのフェーデになり、枝での《女教皇》たちは
辛うじて勝利したけれど、幹でのカザフでは斃れ被爆した
孫娘のカーシャを庇って斃れ、その場に《皇帝》と《女帝》が現れた。

……《女教皇》に《女帝》のことを紹介する《皇帝》、サイッコー♪
遅れて《魔法使い》も駆けつけるが、一方的に《皇帝》にやられてしまう。
でも《魔法使い》って、《皇帝》にとっては過去の自分なのになー。

そして、幹において文華は――。
幹との自分と合一≠オた《女教皇》はフェーデの結果として
引き起こされた事実に耐えられず。
「嫌だ」あたしは叫ぶように拒絶する。「なんで、これ以上のものを背負わなきゃいけないんだ」
――見たくないものを見たくないと願って、なにがいけないの?
「あたしはもう、なにも見たくない!」
「《女教皇》!」
《魔法使い》が険しい子を放った。
「あるものに目をつぶり、ないといいきるのは欺瞞だぞ」
「でも、あたしは見たくないよ!」(略)
「拒むことなどできないのだ」
《魔法使い》がいう。
でも、あたしはもう耐えられない。
なにも見たくないし、なにも感じたくない。
なにも考えたくない。
「《女教皇》!」
ごめん、《魔法使い》。
もう限界だ。
「《女教皇》!」
《魔法使い》は悲痛な声で呼ぶ。(略)
「《女教皇》へ投げかけられるのは怨嗟の言葉のみではないのだ」
闇の中で、彼はいい募る。
「なぜ、それをきかない」
いい募る。
「なぜ」(略)
「なぜ、俺のいった言葉を忘れている」
おまえのすべてを背負うと約束したではないか。

数少ない、《魔法使い》の一人称が「俺」なシーン。
悲痛な叫びが胸を打ちます。

こうしてカードに自ら閉じこもってしまった《女教皇》は、
フェーデの勝利の報酬――カードに転写される前の自分に会う――の
ために、《魔法使い》の手を離れ(というか強制的に離れさせられ)、
《力》の射出≠ノよって《悪魔》とその協力者、
カインのいる1978年へと送り込まれたのでした。

《女教皇》がカードに閉じこもってから、
彼女の一人称から三人称へと地の文が変わってます。

何かと盛り沢山で435ページもあるこの本、
シリーズの中でも私が好きな巻ですね〜。
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2004年07月15日

《審判》はレクイエムを歌う 真・運命のタロット4

皆川ゆか、ティーンズハート。
高校の時分に読んだ本だけど、今は購入済み。

ティターンズでも屈指の霊格を誇る《審判》登場。
ラテン系で詩人な感じの精霊だけど、そのラッパの音はひどいらしい(笑)

冷戦時代に《女教皇》たちが飛ばされてきたおかげで、
《正義》の協力者のマダムの台詞、思いっきりロシア側からの
視点のものになってます。

《恋人たち》の協力者の文華(あやか)は終戦の年に生まれたらしい。
そんな時代の人だったんだなー。

そして、《節制》とその協力者、満田(ミツタ)登場。
《節制》が彼のことをMr.と呼ぶのに引っ掛けてネーミングされたっぽい。
日本男児な親父かもしれないけど、それだけに頭が固い、
っていうかハーフ?の文華に対する偏見っぷりが嫌だ。

そして、この本で初めて知ったのが「いのち短し恋せよ少女(おとめ)」
――ゴンドラの唄

文華が歌っていたことで知りました(p227)。
この歌の全貌を知ったのは、大学4年の夏……
「玄武開伝」の2巻を読んだ時のことになるのだけど。
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2004年07月14日

《力》よ、と叫ぶ者 真・運命のタロット3

皆川ゆか、97年8月刊。

《正義》との話が決裂に終わり、戦いに突入……、
というところで現れたのが《恋人たち》。

この彼は、以前の《魔法使い》&ライコとのフェーデの前、
まだティターンズだった頃の《恋人たち》だった。

《死神》とのフェーデを正式に開始した《女教皇》と《魔法使い》は、
《死神》が分岐≠用いる前に、この当時の《恋人たち》の協力者、
円海学園の生徒の木村文華(あやか)に会うことに。

《恋人たち》は文華の生死をめぐって、
《節制》とのフェーデの最中だった。

この時の《節制》も、紺屋を協力者としていた時より前の彼女で、
当時の協力者は満田(みつた)というオッサン。

学校の図書館で文華と話すために、
人間に見える姿で学園のセーラー服を着た《女教皇》を見て、
懐かしげな表情になる《魔法使い》。

……ライコのことを思い出してる、ってことは
《女教皇》にはまだわからない話。

この本で初めて知ったのが「ゴンドラの唄」。
命短し恋せよ乙女、で始まる歌はメロディは知らないけれど、
歌詞はとても有名。

そして最後に現れたのがティターンズの《力》。
《魔法使い》がラスプーチンの遺体の一部を収める施設を見つけ、
攻撃、破壊しようとしたのを止めに入り――。

久々に女性の精霊の登場ですね。
第二部の最後まで読むと彼女もなかなか……。な精霊だってことが
わかりますが。
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2004年07月13日

《正義》は我にあり 真・運命のタロット2

皆川ゆか、97年4月刊。

《魔法使い》が現れたこともあって、《教皇》とのフェーデが本格化。
いちいち相手の状態を数値にして言うところが、
ドラゴンボールのサイヤ人たちを何か思い出す……かもしれない(笑)

《教皇》の象徴の力、転換≠受けた《女教皇》は時の縦糸の外側に
放り出されるが、《女帝》によって助けられる。
まだこの時、《女帝》自身の姿は露わではなかったけれど。

時の縦糸の中に(っていう表現はいいんだっけ?)に戻ってきた
《女教皇》と《魔法使い》はフェーデに勝利。

中立でフェーデの見届け役の《運命の輪》が第二部では初登場。
《女教皇》たちは元の時代に戻り、《愚者》や片桐先輩に
遭遇したものの、過去の記憶はない。

そうそう、フェーデのために片桐先輩は共通一次を
受けられずに浪人することに。
まだセンター試験じゃなかった時代なんだなぁ。

片桐先輩が《女教皇》のカードに触れた時に、
《魔法使い》がやきもち妬いてるのが何だか微笑ましい。
まだこの時の彼女には、《魔法使い》の気持ちは
わかっちゃいなかったけれど。

第一部に引き続き、ここでも登場した安西さんは
田村桂子によってある事故に巻き込まれ……。
この後、第二部の最後の最後でまた登場するとは思わなったな。

そして、《死神》の協力者である彼女に、
《女教皇》は思わぬ言質をとられ、またフェーデを受けることに。
そして《死神》に飛ばされた先は1962年のカザフスタンだった。

名前だけは聞いたことのあるような、という
キューバ危機直前の頃(で良かったっけ?)。

そこで、《魔法使い》と《女教皇》は《正義》とその協力者、
マダム・ゴーリキーと遭遇!
というところでこの話は次に続く……。

見た目は可愛らしい王子様、って感じの《正義》(ちなみにプロメテウス)は
今後、《女教皇》たちと深い関わりを持つことになる。
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2004年07月11日

《教皇》がiを説く 真・運命のタロット1

皆川ゆか、97年1月刊、再読は7/11〜7/12。

私がこの「運命のタロット」「真・運命のタロット」シリーズに
関わることになったきっかけの本。

最初の主人公は、前シリーズに引き続きライコなのだけど、
彼女は途中で○○○○○になってしまい……。

ライコに代わってストーリーの一人称になったのは
彼女がタロットの精霊として転写された、《女教皇》。

でも彼女は転写された直後に《教皇》たちから攻撃を受けたために、
記憶が欠落していた。――自分が何者なのか、ということさえ。

そんな《女教皇》が男に絡まれてるのを救ったのが、
『《愚者》は風とともに』で初登場だった荒法師の荒サンこと菊沼秦介。
彼のツテで、脳検査を受けた《女教皇》は、脳波が出ていなかった――!
というお話、でいいのかな?

この本で最初に私は虚数について知ったんじゃないかなぁ、と思います。
すごいですよね。
少女向けのティーンズハートで虚数に関して延々と語ってるなんて。
懐かしの島津君も登場してたり。
でも彼はまだ昔を引きずってる模様。

《教皇》の協力者、ピーター・ブルックリンに襲われた
《女教皇》の前に《皇帝》が現れるシーンはなかなか素敵。
ライコの前に初めて現れた時と同じく……(笑)

最後の最後になってようやく《魔法使い》登場。
《女教皇》は記憶を失った状態でも、《魔法使い》という名前と、
その宝石さながらの瞳の輝きのかすかな記憶を頼りにしてた。
その《女教皇》と《魔法使い》の再会のシーン……
本当は嬉しいんだろうに、またいつもの口調で、ってところが笑える。
こんな2人(あ、人じゃないんだっけ・笑)が私は大好きだ。
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2004年07月03日

《女教皇》は未来を示す 運命のタロット13

皆川ゆか、96年8月刊。再読は7/2〜7/3。

1995年に飛ばされたライコは、親友の唯、《運命の輪》と
その協力者の碧川和国、《死神》とその協力者の田村桂子に遭遇、
それぞれと話をすることに。
大河(兄)が本当は誰だったのか、という謎もこの本で解けます。

元の時代に戻るために、《女帝》から申し込まれたフェーデを
受けることにしたライコ。

そのフェーデの対象とは……田村桂子の死。

《女帝》は歴史の改変≠ニして彼女を生かそうとしたのだけど、
フェーデはライコが出したある条件のために、ライコの勝利に。
でもライコにとっても望んだ勝利ではなかった。
約定通り、勝利の暁に《魔法使い》のいる時間に行くライコに《女帝》はいう。
「わかった」《女帝》はポンと手を叩いた。「じゃあ、こういうことにしようよ。その笏を貸すかわりに、水元頼子はあたしの願いをひとつだけきくの」
「……なに?」
さっきのフェーデで要求しようとしてたことだろうか。あたしはますます瞳へいぶかしげな色をこめた。
「この世の中で、最も難しくて、最も簡単なことよ」
《女帝》は微笑む。
「幸せになりなさい」
彼女は、そう繰り返した。(p211より)

この本の最後の最後で明かされる、《女帝》とライコの関係を思うと、
とても重みのある言葉です。

そして、1972年9月12日、坂崎と交戦中の《魔法使い》の許に辿りついたライコ。
(あたしは、彼といっしょに戦ってる)
ずっと、守ってもらってばかりいたあたしが、彼と同じように技をふるってる。それは、確かに《女帝》のアイテムから出てるもので、純粋にあたしの力じゃない。
 それでも、あたしには、なんだかうれしかった。
「どうしたのだ、ライコ」
《魔法使い》があたしの視線に気づく。
「なにを見とれている」《魔法使い》はそういうと、ニヤリと笑った。「よもや、この期に及んで、あらためて《魔法使い》の美しさに気づいたというのではないだろうな」
「そんなんじゃないよ」
 あたしは顔をそむけた。「ただ、あんたと、こんな感じでいっしょに戦うの、初めてだって思っただけだよ」
 付け加えた言葉は、我知らず早口になってしまう。
 あたしにつられたものか、《魔法使い》もなぜか早口で切り返してきた。
「そういうライコも、悪くはない」
(えっ?)
と、思わず顔を戻してしまう。
 目が合った。
 ドキリとする。
 攻撃の閃光が、彼の顔に明確な影を生み出してる。光っては消える光球の輝きは強弱となって、影を生き物のように動かしてた。
 その中に、彼の宝石さながらの瞳がある。それは、光球以上のまばゆさを持っているように感じられた。
 あたしが目をそらすより先に、《魔法使い》の方が顔を動かした。
 コントラストの刻まれた顔は、なんだか恥ずかしそうに見える。
(えっ?)と、もう一度、あたしは思わず、彼の顔をしげしげ――見ようとしたら、いきなり邪魔が入った。
いやー密かにラブラブ♪なんてね(笑)
なんだか微笑ましくて好きなシーンです。

そして未来から一時的に《女教皇》がやってきて、
ある方法で戦いに参加し、激しい戦いの末、
何とか坂崎を封印することはできたものの、
奴は(彼はとは言いたくない・笑)、あるものを道連れにし……。

ラストのp288〜310は、涙なしには読めませんでした。
再読した今回も例外ではなくて、電車の中でウルウルしてしまいました。
ちょうど、卒論の中間発表が終わった、その帰り道で。
「そうか、《魔法使い》はわかってたんだ」
 こんな時だっていうのに、なぜかあたしは微笑んでしまう。
「ライコを死なせたくなかった」
「たとえ、坂崎が記憶の一部を連れていこうとも、おまえを失いたくなかった」
「だけど、あたしは《魔法使い》のことまで忘れちゃうかもしれない」
「忘れさせるものか」
彼の唇が、ふたたび触れた。
「たとえ、ライコの記憶が封じられようとも、《魔法使い》とのつながりは消えない」
「だから、ライコの中に、けっして消えないものを残そう。ひとつの口づけに、十の愛を注ぎ、百回であろうと千回であろうと……いや、《魔法使い》がライコのそばにいられるかぎり、百億回であろうと繰り返そう」(p305〜306)
最後の数行はこんな感じ。
 ここにこうして現れることが運命だったなら、運命よりも、きっと強いものがある。だって、あたしは自分にとって大切な存在があったことを覚えてる。
 見上げると、カードの青年のまとってるマントと同じくらい、青い空が広がってた。
(こんなところで終わって、たまるもんか)
あたしは手にしたカードを胸に抱いた。そうすると、なぜか、少しだけ落ち着いた。
そして、歩き始めた。
そして、第一部は完結し、第二部へと続くのでした。
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2004年07月02日

《女帝》1995 運命のタロット12

皆川ゆか、96年5月刊。

いろいろ動きの激しい一冊……かな?

《月》が象徴の力を発動した瞬間、何者かに消滅させられたため、
その力が作用したのはライコのみだった。

でも、そのことをライコは《魔法使い》に隠してしまう。
彼が《女帝》を協力者として、かつてプロメテウスにいた事実を告げられない。

一方、《愚者》のカードの封印が解け、協力者の片桐先輩、
《魔法使い》とライコの4人で話してたところに唯と大河が現れ、
事情を問い詰められる。

このままでは片桐先輩まで疑われてしまう、と
焦るライコは《魔法使い》に助けを求めるような視線を送ると――。

いやー、なんかここの《魔法使い》、素直じゃないけど
ライコのためを想ってることが伝わってきて大好きです。

タロットの精霊はウソをつくと自分にダメージが返って来るのに、
この場をうまく誤魔化すために唯と大河にも姿を見せ、
幾つものウソを重ねるなんて。
(ああ)と、あたしの口から声にならない声がもれた。
《魔法使い》の外見はいつもとなんらかわりがない。でも、あたしは彼のダメージを見てとることができた。身体には傷ひとつなかったものの、力を減じてることがわかる。
「なんという顔をしている」
《魔法使い》は笑う。
「まさか、《魔法使い》が本当にライコに取り憑いていたなどと、思っているのではないだろうな」
 彼の笑みはいつもの晴れやかなものではなかった。雲に覆われた空から射す陽光と同じだ。薄く紗がかかってる。
 つらそうだ、とあたしは思った。
「なんで、あんなことをいったの」
 あたしは問いかける。
「《魔法使い》とても、たまにはウソをつきたい気分のときがある」
「どうして、そんな気分になったの」あたしは木の上の《魔法使い》を凝視する。「気分でいうにしたって、あんたはウソついたらダメージ受けるんでしょ」
「たいしたことはない」
「ウソつき」
《魔法使い》は頬をほころばせた。もっとも、それは笑みというまではいかない。ほんのわずかに顔を動かしたような印象があった。笑みを浮かべようとして、うまくいかなかったのだとあたしにはわかる。
「たいしたことなくないじゃない」
 あたしは《魔法使い》のやせ我慢に腹さえ立った。《魔法使い》は不思議なものでも見るみたいに、こちらとじっと見つめてくる。それから、ふと顔を上げ、空を仰いだ。
「そうだな」
ぽつりという。
「ひとつだけならともかく、いくつもウソをついた。慣れないことはやるものではないな」
声音には自嘲的な色がにじんでいる。けれど、そこに後悔のニュアンスは微塵もない。
先刻の苛立ちが不意に消えてしまう。《魔法使い》の声は胸を打つ響きを蔵してた。
「どうしてウソなんかいったの」
 あたしはうってかわった穏やかな口調で問いかける。

(略)

「片桐先輩に同情したの?」
「ライコは莫迦なことをいう」
言下に否定の言葉が落ちてくる。もっとも、顔は依然、空を仰いだままだった。
「じゃあ、なんで?」
と問いかけて、あたしはハッとなる。思わず、おずおずとした声で、《魔法使い》の回答に先んじて続けた。
「まさか……あたしのために?」
「ふん」《魔法使い》は鼻を鳴らした。
 不機嫌そうな響きがある。あたしにはこの短い音だけで、彼があたしの言葉を否定することできなかったのだとわかった。

(略)
「《魔法使い》は最初にライコへ約束をしてやったろう?」
「約束?」
「ライコのことを守ってやるといったはずだ」
あたしは思い出す――ふと、脳裏をこれまで考えてみたこともないことがよぎった。
(もしかしたら、《魔法使い》はあたしを協力者にしてしまったこと、申し訳ないと思ってるんじゃないだろうか)
 自分で考えて、まさかって感じてしまう。傲岸不遜を絵に描いたような《魔法使い》の態度からは、想像もつかない。
 でも、いちがいに否定できない思いでもあった。(p77〜84より抜粋)
本当に素直じゃないなぁ、《魔法使い》は。
でも、そんな不器用な優しさが大好きだな、と思います。
「守ってやる」発言は、「《世界》。」の下巻を読むと
更にジーンときてしまいますね。

この後、先のツングース戦で封印されたはずの会堂から脱出してきた
《隠者》が現れ、協力者の《死神》を巻き込むまいと自滅。
更に、《隠者》の脱出に乗じて、《太陽》と坂崎が現れた!

ウソのダメージからまだ立ち直ってない《魔法使い》は苦戦を強いられる。
そこに逃げ出した坂崎を再び封印すべく《世界》が現れ、
しかし理性のないといわれる《世界》に時を飛ばされたライコが
行き着いた先は――13年後の1995年!
そこでライコが出会った人物とは……。
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2004年07月01日

《神の家》は涙する 運命のタロット11

皆川ゆか、講談社X文庫ティーンズハート、96年2月刊。

《月》とのフェーデに勝利した《魔法使い》とライコは約定により、
《月》の象徴の力、体験≠ナ《魔法使い》の失われた
過去の記憶を取り戻すことに――。

《女教皇》の姿がこの時初登場。
名前だけは「《月》が私を惑わせる」の時に《月》がちらりと
名前を出してましたが。
 氷塊は今まさに地表に激突しようとしていた。
「《女帝》!」
《魔法使い》は叫んだ。
激突地点は《魔法使い》のいるところから、およそ数キロ。その距離を置きながらも、《女帝》には彼の声がきこえたかのようだった。氷塊を包む、真っ赤なベールの向こうから、顔を向けてくる。
 その表情は、《魔法使い》の目にはっきりと映っていた。
 にっこりと微笑みかけてくる。
 唇がかすかに動いた。なにか、言葉をつむぐのがわかる。
 けれど、《女帝》の言葉は《魔法使い》に届かなかった。(p248〜249より)
これはツングースにおける過去最大規模のフェーデの時の話。
――まだ《魔法使い》がプロメテウスにいて、
《女帝》を協力者としていた頃の。

けれど、この場には未来の《魔法使い》――協力者は《女教皇》もいます。
2人の《魔法使い》がかち合うことはないんですが。
部分的に《魔法使い》の未来と過去を知ったライコはこの後――。

この時の《女帝》の最期の言葉が何だったのかっていうのは
とても気になるところだけれど、第二部が終わった時点では
明らかになってないんですよねー。
想像にお任せ、なんでしょうか。あぁ気になる。
第三部が出れば明らかになるんだろうか。
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2004年06月30日

《皇帝》はうなずかない 運命のタロット10

皆川ゆか、95年6月刊。

《戦車》VS《太陽》のフェーデは《戦車》方の勝利に終わり、《愚者》のカードの封印が解けます。
そのとき、居合わせたライコたちは《愚者》を封印した際の《女帝》の叫びを体験します。以下本文p166より。
―消えてしまえ、《愚者》め!
《女帝》は叫んでいた。
――おまえは、あたしの大切なあの人を奪ったんだ!
(大切な人?)
誰だろうか。
《太陽》たちは、《愚者》がプロメテウスの仲間を殺すっていってた。もしかしたら、《愚者》は過去にも、プロメテウスのメンバーの誰かを殺してたんだろうか。
悲痛な声で彼女はいい放った。
――あたしのこの世でいちばん愛した人!
(あぁ)とあたしはうめきをもらす。実際に耳にしていたとしても、ここまで彼女の心情は伝わってこなかったろう。感情が波動として認識を揺さぶってるからこそ、あたしは彼女の心を感じることができた。
《女帝》は彼を本当に、愛していた……。
絶望と、怒りと、哀しみこそが彼女の波動のすべてだった。
《月》とのフェーデにライコたちは勝利したものの、改変≠ナ殺害の対象になった河内美代子は正気を失っていて、舞台でジュリエットを演じられる状態ではなく。
仕方なく、ライコは《魔法使い》の力を借りて変身術で河内さんになって舞台に立ちます。ライコは中学の演劇部で舞台監督をやっていて、その時「ロミオとジュリエット」をやっていたために大まかな台詞を覚えていたのです。
ところが、その舞台でロミオとして立っていたのはプロメテウスの《皇帝》。ライコ(変身中なんでwith《魔法使い》)は彼に……。ってなオマケつき。
その後、変身が解ける前に校内の人目につかない場所に行き着き、どうにか人には見られずに変身を解いたライコたちの前に、《皇帝》が現れ……。
《皇帝》と《魔法使い》の会話って見ててとっても面白くて大好きだ(笑)
そして更にその場に現れたのが《女帝》。

「《女帝》……」と、《皇帝》が協力者の名前をつむぐ。
 声音には戸惑いのニュアンスが感じられた。この場に彼女が来るってこと、予想してなかったんだろうか。
「うん」と、呼びかけに女帝はうなずいた。
 その仕草は、いつものちょっと大人びた彼女のイメージにそぐわない。子供っぽさみたいなものを覚えさせた。
「そうか」
《皇帝》は切れ長の目をわずかに細める。声音から戸惑いの色は消えてた。《女帝》の様子に、なにか合点のいくところがあったらしい。
「そうだったな」と納得の顔つきでもらした。「ここに現れる《女帝》はそうだったのだな」
「うん」と、《女帝》は小さく繰り返す。

(略)

「そうか」と《皇帝》は繰り返した。《女帝》の姿をしげしげと見やる。「《女帝》がそうだということは、《皇帝》は……」
「改変≠キるよ」
《女帝》は大きくかぶりを振った。
「たとえ、どんな結果になろうと、改変≠オてみせるよ」
「そうだな」《皇帝》は目を伏せる。
《女帝》は《皇帝》をじっと見つめてた。この場へ現れたのも、べつにあたしたちにどうこうってわけじゃないみたい。さっきの発言以来、こっちには一瞥さえも与えようとしなかった。《皇帝》に会うことが目的だったかのようだ。
《女帝》は《皇帝》よりも背が低かった。横に立つ協力者を仰ぎ見る形になってる。
「あんたに会いたかったよ」
彼女はいった。その言葉をつむぐ彼女の顔は、なにかをこらえているようにも感じられる。しいて自分を気丈に見せようとしているみたいにも思える。
「本当に」と彼女はいい、「本当に、会いたかったよ」
と、繰り返した。
「《女帝》は莫迦だなァ」《皇帝》は微笑む。「会いたければ、いつでも《皇帝》のもとへ来ればよい」
「そういうわけにはいかないよ!」
《女帝》の声が乱れた。押さえつけてた感情が表にもれ出してる。
今にも泣き出しそうな顔に見えた。
 こつん――《皇帝》が《女帝》の額を小突く。いきなり人差し指をあてられ、《女帝》はよける間もない。わずかに頭を後方へそらされてしまう。
そのさまにあたしはギョッとなった。
(なぜ、こうも奴は《魔法使い》に似てるんだ)
容姿や声だけならともかく、いや、百歩ゆずって、こういう姿してると性格まで似てるっていうにしても、これは異常だ。
(どうしてこいつは、《魔法使い》とまったく同じ仕草するんだ!)
 あたしはかたわらに立つ《魔法使い》を見上げた。《魔法使い》は、あたしの視線に気づかぬ様子で、二人の姿を双眸にとらえてる。
「あのねぇ!」
頭を戻しざま、《女帝》は《皇帝》へ喰ってかかった。彼女の顔にあった涙の兆しは拭い去られてる。《皇帝》はニヤリとほおをほころばせた。
「その顔のほうが、《皇帝》は好きだぞ」
ほめ言葉に《女帝》はかすかにほおを染める。まるでごまかすみたいに、そっぽを向いた。
「《女帝》は強く美しい」と、《皇帝》はいう。
「あんたは意地悪だよ」と、《女帝》はよそを見ながらいい返した。
以上、p273〜276でした。
シリーズ中でも5本の指には入るだろう、という大好きなシーンです。
いや、好きというか……その後に起こることを思うとじーんとくる、と言った方が正確かもしれませんが。
とにかく、《女帝》と《皇帝》のコンビは最高♪
コンビで出てくるのはこれが初めてですしね。

この後、《女帝》はライコに自分とのフェーデの予告をし、《皇帝》と共に立ち去る、ってところで話は次へ。
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